わーちゃんの、ぶらり鑑賞さんぽ

週末にぶらり、美術館や展覧会をおさんぽ鑑賞。わーちゃんの鑑賞記をゆるっとお届けします。

『北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより』@国立西洋美術館へ、ぶらり鑑賞

先日、東京都台東区の国立西洋美術館で開催されている「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」を鑑賞してきました。
誰もが一度は見たことがある「神奈川沖浪裏」や「凱風快晴(赤富士)」を生み出した葛飾北斎。その代表作である『冨嶽三十六景』全46図に加え、特別展示2点を含む全48点が一堂に会する貴重な機会です。
浮世絵に詳しくなくても楽しめる展覧会でしたが、実際に鑑賞してみると「同じ作品でも摺られた時期によってこんなに違うのか」と驚かされる場面が何度もありました。
今回は展覧会の見どころと、特に印象に残った作品をご紹介します。

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企画展『北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより』の概要

www.nmwa.go.jp

本展は、2024 年に井内コレクションより当館に寄託された北斎の『冨嶽三十六景』(1830‒33年頃)を初披露する展覧会です。本シリーズ全46図を一挙に公開するとともに、特に高い人気を誇る2図については、それぞれ異なる摺りが1点ずつ加わります。追加されるのは、現存作の中でも際立って摺りと保存状態に優れた「神奈川沖浪裏」と、“赤富士”として知られる「凱風快晴」の希少な色変わり版、通称“青富士”の2点です。本展ではこれら合計48点を、十文字学園女子大学教授・樋口一貴氏の監修のもと、本シリーズの版下絵が描かれた順序を辿る6つのグループに分けて展示します。西洋美術を専門とする当館で北斎の代表作をご覧いただくことで、彼の作品が西洋近代の芸術家たちを惹きつけた歴史に思いを馳せつつ、その魅力を再発見していただく機会となれば幸いです。

会期:2026年3月28日[土]-6月14日[日]
開館時間:9:30~17:30(金・土曜日は~20:00)
休館日:月曜日、5月7日[木](ただし、3月30日[月]、5月4日[月・祝]は開館)
入館料:一般2200円、大学生1300円、高校生1000円、
※障害者割引等あり
※より詳しい情報は公式サイトをご確認ください

 

展示構成

展示室は一部屋のみですが、作品はA〜Fの6グループに分類されています。
一見すると作品を並べただけの展示に見えますが、実は北斎の署名の変化や画風の違いから制作順を推定した構成になっています。


A:北斎の1830年ごろの作品
署名が「北斎改爲一筆」から「前北斎爲一筆」へと展開する傾向があるため、このグループの版下絵が最初に描かれたと推測。


B:浮世絵出版界におけるベロ藍ブームに乗じて制作された藍摺りグループ。藍色が映える空や水がメインの作品。


C:Bグループと署名の書体を比較すると、「爲」が草書に変化。画題として現在の千葉県にのぞむ東京湾の風景を含みます。


D:Cと比較して、署名の書体が「爲」の草書がより簡略化。「前」の書体では、部首であるりっとうの筆運びが縦方向になっているのが特徴


E:「前」のりっとう筆運びが再び横方向に戻っている。


F:署名の書体はEグループと同じ。主版が墨となっている

 

印象に残った展示作品

神奈川沖浪裏

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展覧会の目玉ともいえる作品です。
今回展示されている追加作品は、展覧会開幕直前に井内コレクションへ加わったものだそうです。
近づいて見ると、波の輪郭線が驚くほど鮮明で、飛沫の一本一本までくっきりと確認できます。
浮世絵版画は何度も摺られるため、後の時代になるほど版木が摩耗し線が甘くなります。しかし本作は二重線の欠損がほとんどなく、非常に早い時期に摺られたことがわかるそうです。
教科書やポスターで見慣れた作品でしたが、本物を前にすると波の迫力と緊張感はまったく別物でした。

 

表裏の両面から鑑賞できる作品


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今回の展覧会で特に面白かったのが、一部作品を裏側からも鑑賞できる展示方法です。
普段、美術館では作品の表面しか見ることができません。しかし本展では3作品について裏面も公開されていました。
江戸時代の人々は浮世絵を額装して鑑賞するのではなく、手に取って楽しんでいました。
表から眺め、裏返し、紙の質感を感じながら楽しむ。
そんな当時の鑑賞体験を少しだけ追体験できたのは、今回ならではの魅力だと思います。
そして、展示された3作品から一つ「東海道品川御殿山ノ不二」
満開の桜と富士山を組み合わせた、春らしい一枚です。
画面をよく見ると、花見客で賑わう御殿山の様子が細かく描かれています。
宴会を楽しむ人々、談笑する人々、そして疲れて眠ってしまった子どもを背負う親の姿。
観光名所を描きながらも、人々の日常を温かく描いているところに北斎らしさを感じました。
また桜の表現も印象的で、薄紅色の上に白抜きを施すことで軽やかな春の空気感が見事に表現されています。

 

身延川裏不二

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タイトルにある「裏不二(裏富士)」という言葉が興味深い作品です。
江戸時代には、駿河側から見る富士を「表富士」、甲斐側から見る富士を「裏富士」と呼ぶことがありました。
江戸の人々にとって富士山は日常的に見える存在でしたが、この作品はその“反対側”の富士を描いています。
富士山そのものは変わらないのに、見る場所が変わるだけでまったく異なる風景になる。
『冨嶽三十六景』というシリーズの奥深さを感じさせる一枚でした。

 

江都駿河町三井見世略図

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個人的にもっとも面白かった作品です。
画面には富士山、江戸城、そして越後屋(三井家)が描かれています。
実際の街並みとは異なり、北斎は越後屋の屋根の向きを大胆に変更しています。
なぜそんなことをしたのか。
それは富士山と屋根の白い三角形を美しく配置するため。
つまり北斎は「正確な記録」よりも「画面としての面白さ」を優先したのです。
現代で言えば写真を広角レンズで大胆に撮るような感覚かもしれません。
北斎の構図力の高さを改めて感じる作品でした。

 

総合評価:★★★★☆

『冨嶽三十六景』と聞くと、「神奈川沖浪裏」や「赤富士」だけを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし実際に全点を通して鑑賞すると、北斎が描いていたのは富士山だけではなく、その周囲で暮らす人々の営みや江戸の風景そのものでした。
また今回の井内コレクションは保存状態が非常に良く、線の鋭さや色彩の鮮やかさまで堪能できます。摺りの違いを比較できる展示も多く、美術ファンはもちろん、浮世絵初心者にもおすすめできる内容でした。
教科書で見た名作を「知っている作品」から「実際に体験した作品」へ変えてくれる展覧会です。
会期終了前に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

【ティーカップ・メリーゴーラウンド@三井記念美術館】へ、ぶらり鑑賞

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先日、東京都中央区日本橋室町にある三井記念美術館で開催されている「ティーカップ・メリーゴーラウンド」へ行ってきました。

岐阜県現代陶芸美術館のコレクションを中心に、19世紀半ばから約100年にわたる西洋陶磁器の歴史をたどることができる展覧会です。

タイトルに「ティーカップ」とありますが、展示されているのはティーカップだけではありません。

ティーセットやコーヒーセット、花瓶、装飾壺なども展示されており、当時の人々がどのような暮らしをしていたのかを想像しながら鑑賞できる内容になっていました。

 

 

『ティーカップ・メリーゴーラウンド』の概要

www.mitsui-museum.jp

岐阜県現代陶芸美術館のコレクションより、モダンデザインの系譜につながる西洋陶磁器を一堂に公開。19世紀半ばから約100年間に焦点を当て、ドイツのマイセン、フランスのセーヴル、イギリスのミントン、デンマークのロイヤル・コペンハーゲン、フィンランドのアラビアなどのティー・ウェアやコーヒー・ウェアを中心に、室内装飾品などを加えた名品をご紹介いたします。

会期:2026年4月18日(土)〜6月21日(日)
開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日
入館料:一般 1,500円、大学・高校生 1,000円、中学生以下 無料
※障碍者割引等あり
※より詳しい情報は公式サイトをご確認ください

 

展示構成

国ごとに展示が分かれているため、それぞれの国が持つデザインの特徴や文化の違いも感じることができました。

同じ「ティーカップ」でも国によって装飾や色使いが大きく異なり、見比べながら鑑賞するのも面白かったです。

  • ドイツ
  • フランス
  • イギリス
  • オランダ
  • デンマーク
  • フィンランド
  • 旧ソヴィエト連邦

印象に残った作品

貼花鳥飾蓋付壺


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今回の展示の中でも特に圧倒された作品です。

正直なところ、最初に見た感想は「実用性はどこにあるのだろう?」でした。

しかし、その考えはすぐに消え去ります。

これはもはや実用品というより芸術作品です。

壺全体を埋め尽くすように配置された白い小花。その隙間を彩る鳥たち。

近くで見ると、一つひとつの花がほぼ同じ大きさで作られていることに驚かされます。

さらに鳥の表現も非常に繊細で、今にも動き出しそうな生命感があります。

このような装飾は、マイセンを代表する原型製作者ヨハン・ヨアヒム・ケンドラーによって考案されたそうです。

「枯れない花を贈りたい」という願いから生まれたティー&コーヒーセットの最初期作品という説明を読み、その発想の豊かさにも感心しました。

最初の作例でありながら完成度が非常に高く、当時の職人技術の高さを実感できる作品でした。

 

扇と団扇型花瓶

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こちらはティーカップではありませんが、非常に印象に残った作品です。

花瓶と聞くと、多くの人は円筒形や四角形で、上部が開いている一般的な形を思い浮かべるのではないでしょうか。

しかしこの作品は、そのイメージを大きく覆してきました。

一見すると扇や団扇そのもののような形状で、「本当に花瓶なのだろうか?」と思ってしまいます。

花を生けるための器というよりも、まずは造形美を楽しむ作品のように感じました。

団扇の部分はどこか貝殻のようにも見え、とても可愛らしい印象です。

実際にどのように花を飾るのか見てみたくなる、不思議な魅力を持った作品でした。

 

ティーセット「クラウテッド・ブルー」


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まず何より青色が美しい。これが見た瞬間に思ったコトです。

深みのある青色の中に細かな模様が散りばめられており、一瞬星座や星屑を描いているのかと思いました。

どこか神秘的で幻想的な雰囲気を漂わせています。

特に印象的だったのはティーポットです。

丸みを帯びたフォルムと、くるりと曲線を描く持ち手がとても優雅でした。

ヨーロッパの作品でありながら、どこか異国情緒を感じさせる不思議な魅力があります。

個人的にはアラビアンな雰囲気も感じられ、思わず長く眺めてしまいました。

 

キルタ

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フィンランドの陶磁器メーカー「アラビア」を代表する食器シリーズです。

これまで見てきた豪華絢爛な作品とは対照的で、とてもシンプルな印象を受けました。

しかし、そのシンプルさこそが魅力なのだと思います。

展示室で見ていても「これなら今の家庭でも普通に使えそう」と感じました。

むしろ今回展示されていた作品の中で、一番身近な存在だったかもしれません。

第二次世界大戦後の復興期にデザインされた食器で、単体でも他の食器と組み合わせても使えるよう考えられていたそうです。

現代のライフスタイルにも通じる考え方であり、その先進性に驚かされました。

説明を読んでいるうちに、どこかで見たことがあるデザインだと思った理由も判明しました。

現在は「ティーマ」として世界中で親しまれているシリーズの原型だったのです。

知らず知らずのうちに目にしていたデザインのルーツを知ることができたのも面白い発見でした。

 

総合評価:★★★★★

三井記念美術館でティーカップをテーマにした展覧会が開催されると知った時は少し意外に感じました。

これまで訪れた際には、日本美術や茶道具など「和」のイメージが強かったからです。

だからこそ、西洋陶磁器を中心とした今回の展示は新鮮でした。

現代では100円ショップでも割れにくい食器や食洗機対応の便利な食器が数多く販売されています。

日常生活の中で、今回展示されていたような豪華なティーカップやティーセットに触れる機会はほとんどありません。

だからこそ、当時の職人たちが追求した美しさや技術を間近で見ることができたのはとても貴重な体験でした。

アフタヌーンティーセットを揃えて優雅なティータイムを楽しむことには少し憧れます。

ただ、現実的には眺める専門になりそうです。

それでも、美しいティーカップや陶磁器に囲まれた時間はとても贅沢で、思いのほか楽しめた展覧会でした。

 

【ジョルジュ・ルオー アトリエの記憶@パナソニック汐留美術館】へ、ぶらり鑑賞

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今回の展覧会では、ジョルジュ・ルオーの初期から晩年までの作品を鑑賞できるだけではなく、作品が生まれた「アトリエ」にも焦点が当てられていました。

画家の展覧会というと作品そのものを鑑賞する機会がほとんどですが、本展ではルオーがどのような環境で制作していたのかまで知ることができます。

作品とアトリエをあわせて紹介する構成は珍しく、ルオーという画家をより身近に感じられる展覧会でした。

 

※一部を除き写真撮影は禁止。他サイト様には掲載されている作品がありましたので作品名にリンクを載せる形にしています。

 

 

『ジョルジュ・ルオー アトリエの記憶』の概要

panasonic.co.jp

1948年、パリ・リヨン駅の近くに最後のアトリエを構えたジョルジュ・ルオー。本展では、ルオー作品が生まれた場である「アトリエ」に焦点を当て、作品がどのような環境で、どのような画材を用いて描かれたのか、当館のコレクションと共に紹介します。展示室では、パリのルオー財団の特別な協力のもとルオーが実際に使用していた画材道具や机などを用いて、アトリエの一部再現も試みます。身近な家族でさえも立ち入りを制限されていた聖域である画家のアトリエの記憶を作品と共に紐解きます。

会期:2026年4月11日(土)〜 6月21日(日)
開館時間:午前10時~午後6時(ご入館は午後5時30分まで)
休館日:水曜日
入館料:一般:1,200円、65歳以上:1,100円、大学生・高校生:700円、中学生以下:無料
※障碍者割引等あり
※より詳しい情報は公式サイトをご確認ください

 

展示構成

  • 第1章 国立美術学校時代―ギュスターヴ・モローのアトリエ
  • 第 2 章 フォーヴ時代―画家仲間との共同アトリエ
  • 第 3 章 1920‐30年代―アンブロワーズ・ヴォラール邸での制作
  • 第 4 章 1940‐50年代―最後のアトリエ
  • 第 5 章 ルオーの「アトリエ作品」

印象に残ったTOP3

《モデル、アトリエの思い出》から感じた独特な制作スタイル

興味深かったのが《モデル、アトリエの思い出》です。

この作品はもともと1895年頃に描かれたものですが、その後1950年代になって再び手が加えられたそうです。

私は勝手に「一度完成した作品は完成したまま保存されるもの」というイメージを持っていました。

しかしルオーは数十年後になっても作品と向き合い続け、自らの手で描き直していました。

作品を完成品ではなく、常に変化し続ける存在として捉えていたのかもしれません。

このエピソードからも、ルオーの創作に対する並々ならぬこだわりが感じられました。

 

《二人の娼婦》から見えた当時のモデルたち

二人の娼婦》も印象的な作品でした。

解説によると、アトリエの暖房を使わせる代わりにモデルになってもらっていたそうです。

現代ではなかなか想像しにくい関係性ですが、当時の芸術家とモデルの距離感を垣間見ることができました。

作品を眺めていると、華やかなモデルというよりも、生活の中で偶然出会った人々を描いているような印象を受けます。

また、どこかぎこちなさを感じる表情や姿勢も印象的でした。

専属モデルではなかったからなのか、それともルオー自身が人間の内面を描こうとしていたからなのか。

作品を見ながら様々な想像が膨らみました。

 

アトリエそのものが展示作品だったことに驚き


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今回の展覧会で最も印象的だったのは、実際のアトリエを再現した展示です。

通常の美術展では作品のみが展示されることが多いため、制作現場そのものを見る機会はほとんどありません。

しかし本展ではルオーが使用していた机や画材などが展示されており、まるで制作現場を覗き見しているような感覚になりました。

美術を専門的に学んだ経験がない私にとっては、これほど多くの画材が使われていたことにも驚かされました。

そして何より、パリ12区リヨン駅前のエミール・ジルベール通り2番地という場所で、数々の作品が生み出されていたことを実感できたのが印象的でした。

作品だけではなく、その背景にある制作環境まで知ることで、画家との距離がぐっと近くなったように感じます。


まさかの日本モチーフ《日本の武士(武者絵)》

もう一つ意外だったのが《日本の武士(武者絵)》です。

ルオーの展覧会で日本を題材とした作品に出会うとは思ってもいませんでした。

19世紀末から20世紀初頭にかけては、多くのヨーロッパの芸術家が日本美術から影響を受けていました。

ルオーの作品からも、そうした日本文化への関心を感じることができます。

展覧会を見ていると、画家がどのようなものに興味を持ち、何から刺激を受けていたのかが少しずつ見えてくるのも面白いところです。

 

総合評価:★★★★★

今回の展覧会で、私はジョルジュ・ルオーという画家を初めて知りました。

初期作品は比較的伝統的な印象を受けましたが、時代や人との出会いを経る中で、次第にルオーにしか描けない独自の表現へと変化していったことがよく分かります。

特に14歳でステンドグラス職人のもとへ弟子入りしていた経験は、作品に色濃く反映されていました。

太く黒い輪郭線や鮮やかな色彩の組み合わせは、まるでステンドグラスそのものを見ているかのようです。

また、ルオーは自身の芸術について語る際に「かたち、色、ハーモニー」という言葉を繰り返し用いていたそうです。

実際に作品を鑑賞すると、その言葉が単なる理論ではなく、作品そのものによって表現されていることがよく分かります。

今回の展覧会を通して、私は改めて「個性を持つこと」の大切さを考えさせられました。

誰かの真似ではなく、自分にしかできない表現を追求し続けたルオー。

その姿勢に強く心を打たれた展覧会でした。

作品だけではなく、画家の制作現場や創作への向き合い方にも興味がある方にぜひおすすめしたい展覧会です。

 

【クロード・モネ ― 風景への問いかけ@アーティゾン美術館】へ、ぶらり鑑賞

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当日は休日だったこともあり館内は大変な賑わいでした。さらにテレビなどで紹介された影響もあったのでしょうか、これまで何度もアーティゾン美術館を訪れている私でも驚くほどの混雑ぶりでした。

モネといえば「睡蓮」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし本展では、モネが生涯を通じて風景とどのように向き合い、何を見つめ続けたのかを知ることができます。

有名作品だけではなく、モネという画家の歩みそのものをたどれる見応えのある展覧会でした。

 

 

『クロード・モネ ― 風景への問いかけ』の概要

www.artizon.museum

オルセー美術館が、モネの没後100年という国際的な記念の年の幕開けを飾る展覧会、と位置づける本展では、ル・アーヴル、アルジャントゥイユ、ヴェトゥイユ、ジヴェルニーなど、モネの創作を語る上で重要な場所と時代から、その画業の発展を丹念にたどります。また、同時代の絵画や写真、浮世絵、アール・ヌーヴォーの工芸作品などの表現との関わりから、モネの創作の背景や動機を読み解き、現代の映像作家アンジュ・レッチアによるモネへのオマージュとして制作された没入型の映像作品も展示します。様々なジャンルの視覚表現を交錯させることで、モネの創作活動に新たな光を当てる、全く新しいモネの展覧会です。

会期:2026年2月7日[土] ‒ 5月24日[日]
開館時間:10:00 ‒ 18:00(3月20日を除く金曜日、5月2日[土] 、5月9日[土] 、5月16日[土] 、5月23日[土] は20:00まで)
休館日:2月16日[月] 、3月16日[月] 、4月13日[月] 、5月11日[月]
チケット(当日窓口):一般 2500円、大学生・専門学校生・高校生 無料
※その他の詳しい情報については公式サイトをご確認ください
※障害者割引等あり

 

展示構成

  • 01:モティーフに最も近い場所で
  • 02:写真室1.モティーフと効果
  • 03:かささぎとその周辺
  • 04:風景がと近代生活
  • 05:四季の循環と動きのある風景
  • 06:1880年代の風景探索
  • 07:ジャポニズム
  • 08:連作
  • 09:写真室2.効果と反射
  • 10:写真室3.ジヴェルニーの庭のクロード・モネ
  • 11:池の中の世界

 

印象に残った作品

Section3 《かささぎ》から見えた「雪」の表現

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モネが画家として生きる中で、幾度も雪景色をモチーフに作品を制作していたことを今回初めて知りました。

つい「雪=白色」と考えてしまいますが、実際の雪景色は光や時間帯によって様々な色彩を帯びています。

特に印象的だったのが《かささぎ》です。

作品の中には桃色や紫色がかった雪面があり、垣根には青みを帯びた灰色が使われています。そして黒いかささぎの存在が画面全体を引き締めています。

近くで鑑賞すると、「雪を描いている」というよりも「光を描いている」ように感じられました。

白一色では表現できない空気感や冷たさ、冬の日差しまでが描かれているようで、モネの観察力の凄さを改めて実感しました。


Section4 近代化するパリの熱気を感じた作品群

このセクションでは、モネが大きな興味を抱いていたパリの都市風景が紹介されていました。

当時のパリは急速に近代化が進んでおり、その象徴ともいえるのがサン=ラザール駅です。

モネはパリ郊外のアンジャントゥイユに住んでいたため、この駅を頻繁に利用していたそうです。

そのため駅は単なる交通施設ではなく、モネにとって身近な風景だったのでしょう。

特に目を引いたのは《サン=ラザール駅》と《パリ、モントルグイユ街、1878年6月30日の祝日》でした。

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《サン=ラザール駅》では蒸気機関車から立ち上る煙が印象的で、当時の産業発展の勢いを感じることができます。

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一方、《パリ、モントルグイユ街、1878年6月30日の祝日》では、建物の窓や通りに無数の国旗が掲げられていました。

作品を見た瞬間、「こんなにも国旗が多いのか」と驚きました。

現在の日本でも祝日に国旗を掲げる家庭はありますが、以前と比べると見かける機会は少なくなったように感じます。

だからこそ、この作品からは国民全体で祝日を楽しんでいる当時の人々の高揚感や幸福感が伝わってきました。

まるでその場に立って街の賑わいを眺めているような気持ちになれる作品でした。

Section11 モネがたどり着いた理想郷・ジヴェルニー

展示の最後を飾るのは、モネの終の棲家となったジヴェルニーを描いた作品群です。

モネは自ら庭づくりにも情熱を注いでいたことを知りました。

単に風景を描くだけではなく、自ら創り上げた風景を描くという点に非常に強いこだわりを感じます。

このセクションは、まさにモネ芸術の集大成ともいえる空間でした。

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特に有名な《睡蓮の池、緑のハーモニー》は多くの来館者が足を止めて鑑賞していました。

写真や画集では何度も見たことがありましたが、実物はまったく別物です。

近づいて見ると、睡蓮の花や葉が細かく描き込まれているわけではありません。しかし少し離れると不思議なことに池の風景として見えてきます。

筆触の積み重ねによって風景が成立していることに驚かされました。

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また、《しだれ柳》も印象的でした。

睡蓮の作品が穏やかで明るい印象を与えるのに対し、こちらはどこか重々しく神秘的な雰囲気をまとっています。

見る人によっては少し不気味さを感じるかもしれません。

同じ画家が描いた作品でありながら、これほど異なる感情を呼び起こすことに驚かされました。

 

総合評価:★★★★★

これまでアーティゾン美術館には何度も足を運んできましたが、今回ほど来館者が多かった展覧会は記憶にありません。

それだけモネという画家が現在でも多くの人々を惹きつけ続けているのだと思います。

私自身、これまでは「睡蓮」といった代表作しか知らない状態でした。

しかし今回の展示を通して、モネが雪景色や都市風景、庭園など様々なテーマに挑戦し続けていたことを知ることができました。

知っているつもりで実は知らなかったクロード・モネ。

そんな発見を与えてくれる展覧会でした。

モネが好きな方はもちろん、これまであまり印象派に触れてこなかった方にもおすすめできる展覧会です。

 

【開館50周年記念-ウジェーヌ・ブーダン展―瞬間の美学、光の探求@SOMPO美術館】へ、ぶらり鑑賞

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先日、東京都新宿区にあるSOMPO美術館で開催されていた「開館50周年記念-ウジェーヌ・ブーダン展―瞬間の美学、光の探求」へ行ってきました。

正直なところ、私は今回の展覧会を訪れるまでウジェーヌ・ブーダンという画家を知りませんでした。

作品自体はどこかで見たことがあったのかもしれませんが、美術展へ行くようになって改めて感じるのは、画家の名前を覚えることの難しさです。

しかし、展示を見終えた今では「もっと早く知っておきたかった」と思うほど魅力的な画家でした。

ブーダンは「印象派の先駆者」と呼ばれ、若き日のクロード・モネにも大きな影響を与えた人物です。

今回の展覧会では、海や空を描いた代表作だけでなく、人物や建築物、動物など幅広い作品を通してブーダンの芸術世界に触れることができました。

 

 

『開館50周年記念-ウジェーヌ・ブーダン展―瞬間の美学、光の探求』の概要

www.sompo-museum.org

「印象派の先駆者」と呼ばれる画家ウジェーヌ・ブーダン(1824-1898)の、日本では約30年ぶりとなる展覧会です。空や雲、海景、牛の群れなどを瑞々しい色彩と軽快な筆致で描き出したその作品は、故郷であるフランス北部のノルマンディーをはじめとする各地の光と大気の様子を見事にとらえています。戸外制作を重視し、移ろいゆく自然現象の「瞬間」に向き合うその態度は、若きクロード・モネ(1840-1926)を開眼させ、やがて印象派の誕生へとつながってゆくのです。
海の情景を描いた「海景画」と共に語られることの多いブーダンですが、その魅力はそれだけにとどまりません。油彩・素描・パステル・版画を中心に約100点で構成する本展では、人物や建築モティーフなどにも焦点を当てつつ、フランス近代風景画の発展に大きく寄与したブーダンの魅力を、新たな視点で問い直します。

会期:2026.04.11(土)- 06.21(日)
開館時間:10:00 - 18:00(金曜日は-20:00)※入場は閉館30分前まで
休館日:月曜日
観覧料(当日券):一般2000円、25歳以下1200円、小中高校生無料
※詳細は公式サイトをご確認ください
※障害者割引等あり

 

展示構成

  • I. 海景 ― 海景画家の誕生 | Marines
  • II. 空 ― 瞬間の美学、光の探究 | Ciels
  • 素描 - part 1 樹々、空、船、海 ― 本質を捉える | Dessins - partie 1
  • III. 風景 ― バルビゾン派からの学び | Paysages
  • IV. 建築 ― 旅する画家が見た風景 | Architectures
  • V. 動物 ― 身近なものへの眼差し | Animaux
  • VI. 人物 ― 戸外の群像表現 | Figures
  • 素描 - part 2 人物研究 | Dessins - partie 2
  • 版画 ― イメージの伝播 | Estampes

印象に残ったTOP3

《ベルク、出航》

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今回の展示でまず目を引いたのが《ベルク、出航》です。

港町ベルクの海を進む船を描いた作品ですが、何より印象的だったのは波の表現でした。

白いしぶきが勢いよく立ち上がり、画面の中に確かな動きを感じます。

静止した絵画であるにもかかわらず、波の音や海風まで伝わってくるようでした。

ブーダンは港町オンフルールで育ち、幼い頃から海を身近に感じながら生活していました。

だからこそ、海の表情をこれほど自然に描くことができたのでしょう。

また、この作品はブーダンの画風が変化していく時期に描かれた作品でもあります。

それまでの細やかな筆遣いから、より大胆で自由な表現へ移行しつつある様子が見て取れました。

海を描く画家としての経験と挑戦が詰まった一枚だと感じました。

 

《トルーヴィル街道、ビュタン近郊》

こちらのサイトで作品がわかります

一見すると何気ない風景を描いた作品です。

それでも、その場所に流れる空気や光の変化が丁寧に捉えられていました。

ブーダンは劇的な風景だけではなく、日常の中にある美しさを見つけることに長けていたのだと思います。

私たちが普段見過ごしてしまうような景色も、画家の目を通すことで特別な風景へと変わる。そんなことを感じさせてくれる作品でした。

 

《魚、エイ、トラザメのある静物》

展示作品の中では少し異色に感じた作品です。

海景画や風景画の印象が強いブーダンですが、この作品では魚が主役となっています。

ブーダンは10歳頃から船員として働いていた経験があり、漁港の風景も身近な存在だったそうです。

だからこそ、この作品にも現実味があります。

描かれている魚たちは市場に並ぶ前の漁獲物のようで、決して美しく飾られてはいません。

むしろ生々しさやを感じます。

海から引き揚げられ、すでに命を失った魚たち。

その姿からはどこか寂しさや儚さも感じられました。

全体的に暗い色調でまとめられていることもあり、少しグロテスクな印象を受けましたが、それと同時に強く記憶に残る作品でもありました。

 

《ドゥアルヌネ湾(フィニステール)のサンタンヌ=ラ=パリュのパルドン祭》

※写真撮影不可の為、別サイトで掲載されていた記事で作品確認

こちらはブルターニュ地方の伝統的な祭りを描いた作品です。

遠目に見ると賑やかな風景画のようですが、近くで見ると一人ひとりの人物や衣装が丁寧に描き分けられていることが分かります。

ブーダンは単に風景を描くだけではなく、その土地に暮らす人々や文化にも強い関心を持っていたようです。

土地ごとの風俗や伝統行事を記録するような視点も感じられました。

旅をしながら各地を描き続けたブーダンだからこそ生み出せた作品なのかもしれません。

見ていると、その場の賑わいや人々の会話まで聞こえてきそうな気がしました。

総合評価:★★★☆☆

今回の展覧会を通して、ブーダンが「空の王者」と呼ばれる理由がよく分かりました。

展示室には数多くの風景画や海景画が並んでいましたが、そのどれもが光や空気の表現に優れています。

特に空の描写は圧巻でした。

同じ空でありながら、一日の時間や天候によって全く異なる表情を見せてくれます。

私自身、ブルターニュやボルドー、ヴェネツィアを訪れたことはありません。

それでも作品を見ていると、その土地の風や潮の香り、空気の湿度まで伝わってくるような感覚になりました。

風景をただ記録するのではなく、その場所の「瞬間」を描き取ろうとしたブーダン。

だからこそ、100年以上経った今でも作品に生命力が宿っているのでしょう。

モネをはじめとする印象派の画家たちに大きな影響を与えた理由を、作品を通して実感できる展覧会でした。

印象派が好きな方はもちろん、美しい風景画や海景画が好きな方にもおすすめしたい展覧会です。

 

【出光美術館所蔵 茶道具名品展@大倉集古館】へ、ぶらり鑑賞!

先日、東京・虎ノ門の大倉集古館で開催中の特別展「出光美術館所蔵 茶道具名品展」へ行ってきました。
この展覧会は、茶の湯にまつわる多彩な道具を通して、日本美術の奥深さを体感できる展示です。絵画や書跡、陶磁器、金工、漆工といった幅広いジャンルが、茶道具というひとつの世界でつながっているのが印象的でした

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「出光美術館所蔵 茶道具名品展」は、どんな展覧会?

www.shukokan.org

大倉集古館は、1917年に大倉喜八郎によって創設された、日本初の財団法人による私立美術館です。以来、東洋・日本美術の収集・保存・公開に努め、多彩なテーマで展覧会を開催してきました。
2025年度の特別展では、茶の湯をテーマに開催。
茶道具は、絵画・書跡・陶磁・金工・漆工・木竹工など幅広い分野にまたがる、日本美術の重要な領域です。
本展では、出光美術館所蔵の名品約70件を通して、茶の湯の美と日本美術を横断的に鑑賞する機会を紹介します。

企画展名:出光美術館所蔵 茶道具名品展
会期:2026年2月3日(火)~3月22日(日)
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜日(休日の場合は翌火曜日)
入館料:一般:1,500円、大学生・高校生:1,000円、中学生以下:無料
※障害者割引等あり
会場:大倉集古館

 

展示構成

一、床飾りの茶道具

二、点前の茶道具

三、近代の茶道具

四、懐石のうつわ

 

各章から印象に残った作品を数点

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「一、床飾りの茶道具」から数点

茶の湯では、床の間に掛物や花、生けられた壺、香炉などが飾られ、亭主の趣向を表す「第一の道具」として重要視されてきました。

 

掛物から2作品

「布袋画賛」

異なる宗派の僧同士が合作した掛物で、目の前の「今」を大事にする禅の教えが伝わってきます。柔らかな筆致と遊び心ある構図が魅力でした。

 

「栗鼠図」

愛らしいリスの姿が印象的な掛物で、子孫繁栄の意味が込められています。小さな生き物にも季節や願いが感じられる、一幅の絵画のような掛物でした。

 

香炉からは1作品

「鉄地銀象嵌雁香炉」

中国由来の香炉で、背中が開く仕組みになっているユニークな造りです。床飾りに置かれていたら、ほっこりとした温かさを演出してくれそうでした

 

「二、点前の茶道具」から数点

点前では、茶を点てる一連の動作に使われる釜や茶入、茶碗、水指、香合などが揃い、季節や趣向によって組み合わせを変えるのも楽しみのひとつです。

 

水指の中で一番目を引いたのが「祥瑞蜜柑水指」

明時代末の景徳鎮窯の水指。深みのある青色と丸みをおびたフォルムが特徴で、見た瞬間に思わず顔がほころぶような可愛さがありました。

 

香合からは2作品

「交趾分銅亀香合 銘 万歳々々」

緻密な色使いと亀のフォルムのバランスが素晴らしく、甲羅の紫色と身体の緑が美しく調和しています。蓋部分が亀。甲羅が紫。頭と身体部分が緑釈?掛けているつくりでした。

 

「色絵羽子板香合」
王朝風男女。手前に3人の女房。ことほぎの場面が描かれていました。
小さな器ながら細かい描写が見事で、正月の祝宴を思わせる物語性を感じさせました。細部まで丁寧に描かれていることに驚かされます

 

「三、近代の茶道具」から数点

「桃香合」

桃の産毛や葉っぱの虫くい跡までも表現された繊細な意匠が秀逸で、季節のめぐりや自然の生彩を感じさせます。
「松竹梅皆具」

金襴(きんらん)を用いた優美なセットで、松・竹・梅という吉祥モチーフが華やかな雰囲気を演出し、儀礼の場にもふさわしい気品を感じました。

 

「四、懐石のうつわ」から1作品

正式な茶事では、客人に供される懐石料理に合わせた器も見どころです。
向付や鉢、皿などには季節感や亭主の趣向が色濃く反映され、料理とともに目でも楽しませてくれます。

「色絵桜花文鶴首徳利<一対>」
細身の徳利に桜や藤の文様が描かれ、春から夏への季節の移ろいを感じさせました。淡い卵色の肌に咲き誇る花々が美しく、器自体が静かな時間を語りかけてくるようです。

首?部分がかなりほそく、折れてしまうのではないかと不安にw

 

総合評価:★★★★☆

「出光美術館所蔵 茶道具名品展」は、茶の湯文化の奥深さと、日本美術の幅広さを改めて実感させてくれる展示でした。茶道具というひとつの枠組みを通して、絵画や陶磁器、金工、漆工など様々なジャンルの美術が織り成す日本美の奥行きを堪能できます。

一つ一つの器や掛物には、季節感や願い、遊び心が込められていて、鑑賞しているうちに「道具」という枠を超えた豊かな物語が見えてくるようでした。
日本美術と茶の湯の結びつきを感じられる、じっくり味わいたい特別展です。

 

 

【生誕151年からの鹿子木孟郎 ―不倒の油画道@泉屋博古館東京】へ、ぶらり鑑賞!

鹿子木孟郎の生誕151年を記念した展覧会「生誕151年からの鹿子木孟郎 ―不倒の油画道」にいきました。会場は泉屋博古館東京。
近代日本洋画に本格的な「写実」をもたらした画家の歩みを、初期作から晩年までたどる内容です。
フランス留学で学んだアカデミスムの成果や、日本での活動にも光が当てられていました。
本記事では、展示の見どころと印象に残った作品を紹介します。

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「生誕151年からの鹿子木孟郎 ―不倒の油画道」は、どんなて展覧会?

sen-oku.or.jp

近代日本洋画に本格的な「写実」表現をもたらした鹿子木孟郎(1874–1941)の生誕151年を機に、その画業をたどる特別展です。岡山に生まれ、フランス留学でアカデミスムの巨匠ジャン=ポール・ローランスに学び、正統的リアリズムを日本へ紹介しました。
本展では初期作から渡欧期、帰国後の代表作まで約130点を通して、その歩みを紹介。
「正確に観て、再現する」姿勢を貫きながら、単なる再現にとどまらない本質的な写実を追求した表現に迫ります。
さらに住友家の支援による留学や画家とパトロンの関係にも光を当て、近代日本洋画における写実の意義を再考します。

企画展名:生誕151年からの鹿子木孟郎 ―不倒の油画道
会期:2026年1月17日(土)~ 4月5日(日)
開館時間:午前11時00分~ 午後6時00分
休館日:月曜日(2/23は開館)、2月24日(火)
入館料:一般1500円 学生800円 18歳以下無料
※障害者割引等あり
会場:泉屋博古館東京

 

展示構成

第1章 「不倒」の油画道への旅が始まった。

第2章 タケシロウ、太平洋を渡ってパリまで行く。

第3章 再び三たびのヨーロッパ。写実のその先へ

第4章 象徴主義の光を受けて―不倒の画家、構想の成熟。

 

印象に残ったTOP3

「第1章 「不倒」の油画道への旅が始まった。」から

14歳で絵を描き始めた鹿子木。天彩学舎や不同舎で基礎を学び、のちにフランスへ渡ります。

初期展示では、水彩や鉛筆による風景画・人物画が並びます。
水彩の《野菜図》では、野菜のみずみずしさや重みまで丁寧に表現され、観察力の高さに驚きました。
鉛筆で描かれた《不忍池畔》も、濃淡と遠近法だけで空間をリアルに再現しており、写実への強い意志が感じられます。

若き日の段階ですでに、「正確に観る」姿勢が徹底されていることが印象的でした。

 

「第2章 タケシロウ、太平洋を渡ってパリまで行く。」の作品から

ボストン、ロンドンを経てパリへ。鹿子木はアカデミスムの巨匠
ジャン=ポール・ローランスの教室で本格的なデッサンと写実表現を学びます。

住友家の支援に応えるために制作された、アングル原画による《泉》模写や、ジョセフ・バイユ原画の《厨女図》模写も展示。
原作を正確に写し取ろうとする真摯な姿勢が伝わってきます。

また、《車夫一服(原題:休息)》では労働者を主題に、骨格や筋肉、皮膚の質感まで丹念に描写。
単なる再現ではなく、存在の重みまで表現しようとする写実が心に残りました。

さらに「トローニー(顔の習作)」も展示。
特定の人物ではなく、表情や光、衣装の研究を目的とした作品(「白衣の婦人(原題:「婦人」)」「狐のショールをまとえる婦人」など)から、表現探求への意欲が感じられました。

 

※「トローニー」:「顔の習作」や「表情の研究」といった意味を持つ作品で、特定の人物の依頼によって描かれたものではなく、匿名のモデルを用いて、表情・衣装・光の表現を追求するための絵画になります

 

ホール展示作品

会場ホールには、師ローランスによる大作
《マルソー将軍の遺体の前のオーストリアの参謀たち》が展示されていました。
重厚で緊張感に満ちた歴史画は圧巻。鹿子木がこの画家から何を学んだのかが体感できます。

そして強く心に残ったのが、鹿子木の《大正12年9月1日》。
関東大震災の惨状を、大画面で描いた作品です。

瓦礫の中を歩く人々、立ちこめる煙、暗い空。
感情に流されることなく、冷静な視線で記録しようとする態度が感じられました。

歴史画として、日本で何を描くべきか――。
その問いに真正面から向き合った一作だと思います。

 

総合評価:★★★★☆

本展は、鹿子木孟郎という画家を「写実」という視点から改めて見つめ直す展覧会でした。

正確に観て描くこと。
しかしそれは、単なる再現ではなく、本質へ迫ろうとする行為でもある。

初期作から震災を描いた大作までを通して、その一貫した姿勢がよく伝わってきます。
写実表現が見直されつつある今だからこそ、あらためて見る価値のある内容でした。

重厚で誠実な油彩の世界にじっくり向き合える、見応えのある展覧会です。